面会に行くたびに、何を話せばいいのかわからなくなる。
そんなふうに感じているご家族はとても多いです。
久しぶりに会うから、ちゃんと話さなきゃと思う。
でも、いざ顔を見ると何を言えばいいのかわからない。
会話が続かないと、来た意味があったのかなと不安になる。
こういう悩みは本当によくあります。
特に、認知症があったり、反応が少なくなっていたりすると、なおさら難しく感じやすいです。
前みたいに自然に話せないことが、家族にとってつらくなることもあります。
でも、面会は上手に会話をする時間でなくても大丈夫です。
この記事では、面会で何を話せばいいかわからないご家族に向けて、会話の考え方と話しやすい内容を、現役介護士の目線でわかりやすくお伝えします。
hosomesan.online
たくさん話せなくても大丈夫
面会というと、楽しい会話をたくさんしなければいけないように感じる方もいます。
でも実際には、長く話せることより、本人が落ち着いて過ごせることのほうが大切です。
何を話そうかと焦ると、家族のほうが緊張してしまいます。
その緊張は、本人にも伝わりやすいです。
すると、ますます会話がぎこちなくなってしまうことがあります。
現場で見ていても、会話が多い面会だけがよい面会ではありません。
少し声をかけて、そばに座って、穏やかな空気で過ごすだけでも、本人の表情がやわらぐことはよくあります。
まずは、話題をたくさん用意するより、沈黙があっても大丈夫と思うことが大事です。
今起きている話
会話のきっかけが思いつかないときは、難しい話をしなくて大丈夫です。
今ここにあることから話し始めると、自然に入りやすいです。
今日はあたたかいね
この服似合っているね
顔色がよく見えて安心したよ
お昼ごはんはどうだった
ここにお花があるね
こうした、目の前のことをそのまま言葉にするだけでも会話の入口になります。
大事なのは、正解の話題を探すことではなく、話しかけやすい一言を出すことです。
面会で苦しくなりやすいのは、意味のある話をしなければと思いすぎることです。
昔の話
会話に困ったとき、役立ちやすいのが昔の話です。
特に高齢の方や認知症のある方では、最近の出来事より、昔の記憶のほうが話しやすいことがあります。
昔の家のこと
仕事のこと
よく作っていた料理のこと
子どもが小さかった頃のこと
旅行や親戚の集まりのこと
こうした話題は、答えようとしなくても、聞いているだけで落ち着く方もいます。
会話を成立させることより、その人がなじみのある世界に少し戻れることのほうが大きいことがあります。
ここで気をつけたいのは、覚えてると何度も試すように聞かないことです。
思い出せるかを確認する形になると、本人がしんどくなることがあります。
こんなことがあったよね、と一緒にたどるような話し方のほうがやわらかくなります。
認知症のある方でも昔の話をよく覚えているご利用者はたくさんいます。
質問ばかりしない
何を話せばいいかわからないと、つい質問ばかりになってしまうことがあります。
元気
ごはん食べた
眠れてる
覚えてる
こうした聞き方です。
もちろん悪いわけではありません。
認知症がある方や、言葉が出にくい方には負担になることもあります。
そのため、質問よりも、こちらから少し話してみるほうが会話がやわらかくなることがあります。
今日は来る途中でこんな花が咲いていたよ
家ではこんなことがあったよ
この前の写真を持ってきたよ
こんな話し方です。
答えを求めすぎない会話のほうが、面会では続きやすいことがあります。
写真や持ち物があると話しやすい
面会で毎回何を話すか悩む方には、写真や小さな持ち物がかなり助けになります。
話題を一から作らなくても、目の前にあるものが会話のきっかけになるからです。
家族の写真
昔の家の写真
季節の景色の写真
孫の写真
好きだった食べ物や趣味につながる物
こうしたものがあると、話題がふわっと広がりやすいです。
言葉だけよりも、見ながら話せるほうが、本人も反応しやすいことがあります。
特に、会話が途切れるのが怖い方にはおすすめです。
物がひとつあるだけで、話題を持たせなければという負担が少し軽くなります。
反応が薄くても無意味ではない
面会でつらくなりやすいのは、本人の反応が少ないときです。
うなずきも少ない。
会話も続かない。
表情もあまり変わらない。
そうなると、話しかけても意味がないのかなと感じてしまうことがあります。
でも、反応が少ないことと、伝わっていないことは同じではありません。
本人の中では聞いていて、安心していることもあります。
表に出る反応だけでは測れないことが多いです。
現場でも、面会中はあまり変わらなく見えていても、家族が帰ったあとに少し落ち着いていたり、表情がやわらいでいたりすることがあります。
だから、反応の薄さだけで、うまくいかなかったと決めなくて大丈夫です。
こんな話題は入りやすい
面会で使いやすい話題を、会話のきっかけとしてまとめるとこうなります。
季節のこと
今日の天気
部屋の中にあるもの
服や髪型
食事やおやつ
昔の仕事や家のこと
家族の近況
写真の話
好きだった食べ物や行事
どれも、深い話でなくて大丈夫です。
少し言葉が続けば十分ですし、本人が聞いているだけでもかまいません。
大事なのは、答えやすいかどうかより、安心して聞けるかどうかです。
話せない日があっても、それでいい
毎回うまく話せるわけではありません。
家族にも調子がありますし、本人にもその日の体調や気分があります。
今日は全然話せなかった、と落ち込む日もあると思います。
でも、話せない日があること自体は自然なことです。
その一回で、面会の意味がなくなるわけではありません。
来てくれたこと、顔を見せてくれたこと、その場に一緒にいたこと自体に意味があります。
面会は、毎回何かを残さなければいけない時間ではありません。
うまく話せない日も含めて、関わりを続けていくことが大切だと思います。
気持ちが楽になる一言
最後に、面会で困ったときに使いやすい一言を置いておきます。
来たよ
今日は顔を見に来たよ
会えてよかったよ
寒くない
ゆっくりしてる
また来るね
無理しなくて大丈夫だよ
こうした短い言葉でも十分です。
長い会話にならなくても、安心感は伝わることがあります。
何を話せばいいかわからないときほど、短くてやわらかい言葉が役立ちます。
まとめ
面会で何を話せばいいかわからないのは、珍しいことではありません。
むしろ、大切に思っているからこそ、ちゃんと話したいと悩むのだと思います。
でも、面会は会話の上手さを見せる時間ではありません。
たくさん話せなくても大丈夫です。
沈黙があっても大丈夫です。
今ここにあることを話すだけでも、昔の話を少しするだけでも、写真を見ながら一緒に過ごすだけでも十分です。
現役介護士として感じるのは、面会で大切なのは、うまく話すことではなく、安心できる空気を一緒につくることだということです。
何を話せばいいかわからない日があっても、会いに来てくれることそのものに意味があります。
だから、うまく話せるかより、無理なく会いに行けることを大切にしていいと思います。