介護士の日常

ご利用者のよくある悩みと職員の現実を綴ります

「入所後に本人が『帰りたい』と言ったとき、家族はどう受け止めればいい?」現役介護士目線でお伝えします

 

特養に入所したあと、本人から
「家に帰りたい」
「もうここは嫌だ」
「連れて帰って」
と言われて、つらい気持ちになったご家族は多いと思います。

せっかく本人のことを考えて入所を決めたのに、そんなふうに言われると、
「やっぱり入所させないほうがよかったのかな」
「自分がひどいことをしてしまったのではないか」
と、自分を責めてしまうこともありますよね。

でも、現場で働いていると、この「帰りたい」という言葉はとてもよく聞く言葉でもあります。
そして、その言葉がそのまま「今すぐ家に戻りたい」という意味だけとは限りません。

この記事では、入所後に本人が「帰りたい」と言ったとき、ご家族はどう受け止めればいいのかを、現役介護士の目線でわかりやすくお伝えします。

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「帰りたい」はよくある言葉

まずお伝えしたいのは、「帰りたい」という言葉は特養では珍しいものではないということです。
特に入所して間もない時期は、新しい環境に戸惑い、不安や寂しさが強くなりやすいため、そうした言葉が出ることはよくあります。

家を離れて暮らすことは、それだけで大きな変化です。
長年住み慣れた場所ではなく、新しい部屋、新しい人、新しい生活リズムの中に入るわけですから、気持ちが揺れるのはとても自然なことだと思います。

ご家族はその言葉を重く受け止めてしまいやすいですが、まずは「こういう言葉が出ること自体は珍しくない」と知っておくだけでも、少し気持ちが落ち着くことがあります。

いろいろな気持ちが混ざっている

本人が「帰りたい」と言うとき、本当に家に戻りたい気持ちがあることももちろんあります。
でも、それだけではなく、寂しい、不安、落ち着かない、わからない、こわい、そうした気持ちが一緒になって出ていることも多いです。

特に高齢の方や認知症のある方は、自分の気持ちをうまく言葉にできないことがあります。
そのため、不安や混乱をまとめて「帰りたい」という言葉で表している場合があります。

たとえば、
家族に会いたい
慣れた場所が恋しい
今いる場所がよくわからなくて不安
思うように体が動かずつらい
こうした気持ちが「帰りたい」という一言に込められていることもあります。

だからこそ、その言葉をそのまま受け取って「すぐ退所したいという意味だ」と決めつけなくて大丈夫です。

すぐに否定しない

本人から「帰りたい」と言われたとき、ご家族はつい
「そんなこと言わないで」
「ここで頑張ろうね」
「もう家では見られないの」
と返したくなることがあると思います。

気持ちはよくわかります。
でも、最初に大事なのは、言葉を正すことよりも、まずその気持ちを受け止めることです。

たとえば、
「帰りたくなるよね」
「寂しいよね」
「急に環境が変わってしんどいよね」
そんなふうに、まず本人の気持ちに寄り添うような返し方をすると、少し落ち着くことがあります。

現場でも、すぐに否定されるより、「そう思ったんだね」と受け止めてもらえたほうが、表情がやわらぐ方は多いです。
事実を説明することより、まず気持ちを受け止めることのほうが大事な場面は少なくありません。

ご家族がすべて背負い込まない

「帰りたい」と言われると、ご家族はどうしても
「自分のせいかもしれない」
「本人を傷つけてしまった」
と感じやすいです。

でも、その言葉が出るたびに全部を自分の責任だと思わなくて大丈夫です。
入所直後は特に、環境の変化による不安が強く出やすい時期ですし、その日の体調や気分によって言葉が強くなることもあります。

現場で見ていても、ご家族が面会に来たときだけ「帰りたい」と強く言われる方もいますし、普段は比較的落ち着いて過ごされている方もいます。
ご家族の顔を見ると安心する一方で、家を思い出して気持ちが揺れることもあるからです。

そのため、「帰りたい」と言われたことだけで、入所が間違いだったと決めなくて大丈夫です。
大切なのは、その言葉が出た背景や、そのあとどんな様子で過ごしているのかを見ていくことだと思います。

安心できる時間を作る

本人が「帰りたい」と言ったとき、ご家族は何とか説得しようとしたくなることがあります。
でも、面会の場で大切なのは、答えを出すことより、安心できる時間をつくることです。

長く説明するより、そばに座ってゆっくり話を聞いたり、手を握ったり、昔の話をしたりするだけで落ち着くこともあります。
会話がうまく続かなくても、顔を見せて穏やかに過ごすこと自体に意味があります。

面会が終わるときも、急に立ち去るより、
「また来るね」
「次も顔を見に来るね」
と安心できる言葉を残して帰ると、不安が少しやわらぐことがあります。

ご家族にできることは、すべての気持ちを解決することではなく、今ここで安心できる時間を少しつくることだと思います。

「帰りたい」が続くときは職員に普段の様子を聞いてみる

ご家族が面会のたびに「帰りたい」と言われると、だんだん会いに行くのがつらくなることもあります。
そんなときは、一人で悩まず、職員に普段の様子を聞いてみてください。

たとえば、
普段も同じように言っているのか
面会のあとに落ち着いているのか
どんなときに不安が強くなるのか
何をすると安心しやすいのか
そうしたことを知るだけでも、受け止め方が少し変わってきます。

現場では、面会中は「帰りたい」と強く訴えていても、そのあとしばらくすると普段の生活に戻って落ち着いている方もいます。
逆に、特定の時間帯やきっかけで不安定になりやすい方もいます。

ご家族だけが見ている時間ではわからないことも多いので、職員と情報を共有しながら考えていくことが大切です。

言葉通りに受け止めすぎない

認知症のある方の場合、「帰りたい」という言葉にはさらにいろいろな意味が重なることがあります。
今いる場所が理解しにくい、昔の家を思い出している、安心できる場所を求めている。そうした気持ちが一言に表れていることもあります。

そのため、言葉だけをそのまま受け取って、「今すぐ退所したいのだ」と考えすぎなくて大丈夫です。
むしろ、今不安なのだな、落ち着かないのだな、と気持ちに目を向けるほうが大切なことも多いです。

認知症のある方に対しては、理屈で説明するより、気持ちを受け止めて安心感をつくるほうが落ち着きやすいことがあります。
これはご家族だけで頑張る必要はなく、施設の職員と一緒に考えていけば大丈夫です。

つらいときは面会のやり方を変える

もし毎回「帰りたい」と言われて、ご家族自身がとてもつらくなっているなら、面会の仕方を少し変えてみるのもひとつです。
たとえば、面会時間を短めにする、他の話題を中心にする、面会の頻度を少し調整する、職員にそばについてもらう。そうした工夫で気持ちの揺れが少なくなることもあります。

また、ご家族がつらさを抱え込んでしまうと、面会自体が苦しい時間になってしまいます。
そうなる前に、「どう関わると本人も家族も少し楽か」を考えていいと思います。

無理をして毎回同じように頑張る必要はありません。
関わり方を調整しながら、その人に合った形を見つけていけば大丈夫です。

「帰りたい」は入所は間違えだったわけではない

ご家族がいちばん苦しくなりやすいのは、「帰りたい」と言われたことを、そのまま「入所は失敗だった」と受け止めてしまうことです。
でも、この二つは同じではありません。

特養に入ることを選んだのは、本人と家族の生活を支えるためだったはずです。
在宅介護が難しくなったこと、安全面の不安があったこと、家族の負担が限界に近かったこと。そうした理由があって考えた選択だったと思います。

入所後に本人が気持ちを揺らすことがあっても、それだけでその判断が間違いだったとは言えません。
新しい環境に慣れるまでには時間がかかることもありますし、その中で少しずつ落ち着いていく方も多いです。

大切なのは、今の状態を見ながら、どう支えていくかを考えることです。
過去の判断を責め続けることではないと思います。

まとめ

入所後に本人が「帰りたい」と言ったとき、ご家族はとてもつらい気持ちになると思います。
でも、その言葉は珍しいものではなく、不安や寂しさ、混乱など、いろいろな気持ちが重なって出ていることも多いです。

大切なのは、すぐに否定したり、全部を自分の責任だと思ったりしないことです。
まずは気持ちを受け止めて、安心できる時間をつくりながら、普段の様子について職員とも共有していくことが大切です。

特に認知症のある方では、言葉どおりに受け取りすぎなくて大丈夫なこともあります。
面会の仕方を少し調整したり、関わり方を工夫したりしながら、その人に合った形を探していけば十分です。

現役介護士として感じるのは、「帰りたい」という言葉が出たからといって、入所の選択が間違いだったとは限らないということです。
その言葉の奥にある気持ちを見ながら、家族と施設で一緒に支えていくことが何より大切だと思います。