介護士の日常

ご利用者のよくある悩みと職員の現実を綴ります

特養入所を本人にどう伝える?現役介護士目線でお伝えします

 

特養入所が決まりそうになったとき、ご家族がとても悩むのが、本人にどう伝えるかということだと思います。
正直に全部話したほうがいいのか。
まだ言わないほうがいいのか。
嫌がられたらどうしたらいいのか。
この悩みはとても多いです。

入所の話は、本人にとっても家族にとっても大きな出来事です。
だからこそ、ただ事実を伝えればいいわけではありません。
どう伝えるかで、不安の強さも、その後の受け止め方もかなり変わります。

現場で感じるのは、うまく伝えるというより、本人ができるだけ不安になりすぎない形で伝えることが大切だということです。
この記事では、特養入所を本人にどう伝えればいいのかを、状態や場面に分けてわかりやすくお伝えします。

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正解は一つではない

最初にお伝えしたいのは、本人への伝え方にひとつの正解はないということです。
認知症があるかどうか。
本人がどこまで理解できるか。
もともとの性格がどうか。
入所まで時間があるのか、急ぎなのか。
それによって、合う伝え方は変わります。

たとえば、しっかり理解できる方に曖昧な説明をすると、かえって不信感につながることがあります。
反対に、認知症が強くて新しい情報が不安につながりやすい方に、細かく説明しすぎると混乱が強くなることもあります。

だから大切なのは、家族として正しい伝え方を探すことより、本人が今どのくらい受け止められるかを考えることです。
ここを間違えなければ、伝え方は少しずつ調整していけます。

本人に理解する力がある場合はごまかしすぎない

本人に状況を理解する力がある場合は、あまりごまかしすぎないほうがいいことが多いです。
急に何も知らされないまま連れて行かれると、ショックだけでなく、家族への不信感につながることがあるからです。

ただし、伝え方はとても大事です。
家ではもう無理だから。
面倒を見きれないから。
こういう言い方は、本人を強く傷つけやすいです。

そうではなく、
これから安心して過ごせる場所を一緒に考えている
体を休めながら生活しやすい場所を探している
家族だけで抱え込まずに支えていきたい
という形で伝えたほうが受け止めやすいことがあります。

大事なのは、家族の限界だけを伝えることではなく、これからの生活をどう守るかという形で話すことです。

納得より安心を優先する場合

認知症のある方では、話の内容をそのまま理解して受け止めることが難しい場合があります。
そのため、すべてを理屈で説明して納得してもらおうとすると、かえって不安が強くなることがあります。

この場合は、細かい説明よりも、安心できる言葉を優先したほうがいいことがあります。
しばらくゆっくり過ごせるところに行こうね
体を休めながら過ごそうね
みんなで支えてくれる場所だよ
そんなふうに、不安を強くしすぎない言い方のほうが落ち着きやすいことがあります。

ここで大切なのは、言い負かさないことです。
認知症のある方に何度説明しても、毎回同じように不安が出ることがあります。
そのたびに正そうとするより、今不安なんだなと受け止めて、安心につながる言葉をかけるほうが現実的なことも多いです。

伝えるタイミング

本人に伝える時期も悩みやすいところです。
あまりに早く伝えると、入所まで長い間ずっと不安が続くことがあります。
逆に、直前まで何も言わないと、突然すぎて受け止めきれないことがあります。

そのため、本人の理解力にもよりますが、数日前から少しずつ話題に出していく形が合うこともあります。
いきなり入所ですと切り出すのではなく、これから先の暮らしをどうするか、少し支えを増やしたいと思っている、安心して過ごせる場所を考えている、というところから入ると受け止めやすいです。

ただし、認知症が強くて毎回初めて聞くような反応になる方では、早く伝えることがそのまま安心につながるとは限りません。
この場合は、前もって長く説明するより、近い時期に簡潔に伝えるほうがよいこともあります。

誰が伝えるのか

同じ内容でも、誰が伝えるかで受け止め方は変わります。
普段から信頼している家族が伝えるのか。
本人が頼りにしている子どもが話すのか。
医師やケアマネジャーなど、第三者が一緒に説明するのか。
ここは意外と大きいです。

家族だけで話すと感情的になりやすい場合は、ケアマネジャーや相談員に同席してもらうのもひとつです。
家族が一方的に決めた話に見えにくくなることがありますし、本人も少し受け止めやすくなることがあります。

特に、家族が言うと反発しやすいけれど、医師や専門職の話には耳を傾ける方は少なくありません。
誰がいちばん落ち着いて話せるかを考えることも大切です。

理由を一つに絞る

家族は、入所を決めるまでにいろいろな理由を考えています。
夜が大変。
転倒が心配。
認知症の対応が限界。
仕事との両立が難しい。
どれも本当だと思います。

でも、それを全部いっぺんに本人へ伝えると、責められているように感じたり、話が重すぎて頭に入らなかったりすることがあります。
だから、伝えるときは理由をひとつに絞ったほうが伝わりやすいです。

たとえば、
安心して過ごせる場所を考えたい
今より体に負担の少ない生活にしたい
夜も見守ってもらえる場所で暮らしたい
このように、前向きな軸をひとつ置いて話すほうが落ち着いて受け止めやすくなります。

避けたほうがいい言い方

本人に伝えるとき、できれば避けたい言い方があります。
これはかなり大事です。

もう家では見られない
家族も限界
言うことを聞かないから
迷惑がかかるから
ここにいたら無理だから

こうした言葉は、事実の一部だったとしても、本人には見捨てられた感じや責められた感じとして残りやすいです。
入所後も、その傷つきが不信感として続くことがあります。

伝えたいのは、家で無理だったという結論だけではなく、これからも支えていくという姿勢です。
だから、家族が一緒に考えた結果であること、これからも会いに行くこと、ひとりにするわけではないことが伝わる言葉のほうが大切です。

不安を煽らない伝え方

使いやすい言い方の例をいくつか挙げます。

今より安心して過ごせる場所を一緒に考えているよ
体を休めながら過ごせるところがあるよ
みんなで支えてくれる場所で少し落ち着いて過ごそう
家族もこれからちゃんと会いに行くし、一緒に考えていくよ
ひとりにするわけじゃないから安心してね

認知症がある方なら、もっと短くてもよいことがあります。

しばらくゆっくりできるところに行こうね
安心して過ごせるところだよ
一緒に行くから大丈夫だよ
また会いに来るよ

大切なのは、正確な説明を長くすることより、不安を増やしすぎないことです。

言い合いをしない

本人に伝えたとき、すぐに納得してもらえるとは限りません。
嫌だと言われることもありますし、怒ることもあります。
それは自然な反応です。

そのときに、なぜ必要なのかを長く説明して説得しようとすると、かえって気持ちがぶつかりやすくなります。
特に認知症がある方では、説明の内容より、いやな気持ちだけが残ることもあります。

嫌がられたときは、まずその気持ちを受け止めることが大事です。
嫌だよね
急に言われたら不安だよね
そう思うよね
と受け止めたうえで、少し時間を置いたり、話題を変えたりしたほうがいいこともあります。

一回でうまく伝えきろうとしないことが大切です。

当日の別れ方

入所当日は、本人も家族も気持ちが揺れやすいです。
このとき、家族が泣きながら何度も謝ったり、重たい雰囲気になりすぎたりすると、本人の不安がさらに強くなることがあります。

もちろん、家族にもつらさがあります。
でも、本人の前ではできるだけ落ち着いた空気を作ったほうが入りやすいことがあります。
ここで大事なのは、もう終わりのような空気を出さないことです。

また来るね
少しずつ慣れていこうね
困ったら職員さんもいるよ
そんなふうに、これからも関係が続くことが伝わる言葉で終えるほうが安心につながりやすいです。

家族だけで抱え込まない

本人への伝え方は、本当に悩みます。
家族だけで答えを出そうとすると、どうしても苦しくなりやすいです。

だから、ケアマネジャーや相談員、医師、施設側と相談しながら決めて大丈夫です。
本人の性格や認知症の状態を踏まえて、どういう伝え方がよさそうか一緒に考えるほうが現実的です。

現場でも、家族だけで抱え込んで苦しくなっている方は多いです。
でも、特養入所は家族だけの問題ではなく、これからみんなで支えていくためのスタートでもあります。
最初の伝え方から、周りを頼っていいと思います。

まとめ

特養入所を本人にどう伝えるかに、ひとつの正解はありません。
大切なのは、本人の理解力や性格に合わせて、納得より安心を優先する場面もあると知っておくことです。

理解できる方には、ごまかしすぎず、でも責めるようにならない言い方で伝えること。
認知症のある方には、細かな説明より、不安を強くしすぎない短い言葉で安心を伝えること。
誰が伝えるか、いつ伝えるか、どの言葉を使うかも大切です。

避けたいのは、家ではもう無理、家族が限界、といった傷つきやすい言葉です。
伝えたいのは、これからも支えていくこと、ひとりにするわけではないこと、安心して過ごせる場所を考えたということです。

現役介護士として感じるのは、本人への伝え方でいちばん大事なのは、うまく説明することではなく、不安の中に一人にしないことだということです。
家族だけで抱え込まず、周りと一緒に考えながら進めていけば大丈夫です。